
【授業で勝負!】分かっていてもできない自分・・・
「せっかく説明しているのに,全然聞いてくれないんだよなー」
「一生懸命教えているのに,生徒が全然やる気がないんですよー」
職員室でよく見る光景です。
教師にとって授業は一番の力の見せ所。
『授業で勝負』と,先輩先生方から耳にタコができるくらい言われたものです。
その言葉は真理をついていて,
どんなに生徒指導で大変な生徒でも,授業で生徒をコントロールできる教師は
生徒から尊敬され,真の信頼関係が築けるのです。
ただ,口で言うほど授業で勝負するのは簡単なことではない。
私自身も過去に,上記のような職員室でのいわば教師の『愚痴』で
自分の力量のなさをごまかしてしました。
【授業改善のコツ】生徒が理解する3つの方法
私の経験上,生徒が理解を深めるのは,次の3つの方法があります。
①自分の実体験に基づいたもの
②自分の言葉でまとめたもの
③友達の意見
なのです。
この内容を意識して実践すれば本当の意味で『授業で勝負』できる教師になれます。
でも,
でも、それができない教師、少なくありません。
実は
『授業では説明をすればするほど,生徒はわからなくなる』
のです。
「えっ?」「どうして?」「だって,説明しなければわからないじゃないか?」
こういった声が聞こえてきそうですが,実はそうでもないのです。
誤解を恐れず言います。
教師とは,学生時代成績がよく勉強ができない生徒の気持ちがあまりわかりません。
中学校の先生の場合は自分の教科があります。
担当教科についても同じことが言えるはずです。
きっと,学生時代成績もよく,テストでも高得点を取っていたことでしょう。
そして,教師となって生徒に指導をする。
こうなるとどうしても無意識のうち『教師が上,生徒が下』という上下関係が授業の中でも出てしまうのです。
それが一番わかりやすく出てくるのが
『説明』
です。
教師は基本,『説明』が好きです。
つまり,しゃべるのが大好きなのです。
もっと言うと,「自分の説明は誰よりもわかりやすい」と思い込んでいるのです。
過去の私もそうでした。その当時は『教師の説明』で『生徒は理解する』と本気で思っていました。
しかし,生徒が理解をするのは,教師の説明ではないのです。
私の経験上,生徒が理解を深めるのは,次の3つの手段があります。
①自分の実体験に基づいたもの
②自分の言葉でまとめたもの
③友達の意見
なのです。
①と②は何となく理解できるかと思います。
生徒に限らず,自分で経験したことや自分でまとめたものは頭に入りやすいし記憶に残りやすいのです。
そして③の『生徒の意見』ですが,これは生徒ならではかな思います。
実際に授業をしてみて分かったのですが,同じ説明をするのに教師がするのと同級生,
つまり,友達が説明するのとでは,断然友達の説明の方が集中して聞くのです。
だから,授業においても教師が説明するのではなく,生徒自身に説明させるよう
授業の展開を工夫されている教師も多いと思います。
このように授業の中で『教師の説明』は生徒の理解を阻害するものです。
『説明は極力削る』が鉄則なのです。
では,どのくらい削ればよいのか?
【授業改善の方法】ポイントはCMです。
私はいつもこう考えて実践しています。
『教師の説明は15秒以内』
これには根拠があります。
この15秒という時間はCM(コマーシャル)の時間と同じです。
CMとは毎日テレビで流れていて,意識していなくても見てしまうものです。
特に興味があるものばかり流れているわけでもないのに,何となく見てしまう。
つまり,15秒という時間は人間が何となく聞いたり見たりするのに耐えられる時間の単位なのです。
授業中の説明も15秒なら無意識に聞いてくれます。
これが20秒,30秒と長くなると,だんだん生徒の集中力は低下していきます。
では,どうすれば15秒以内で説明ができるようになるのか?
私は授業の準備段階で次の3つのことを実践しています。
①説明が必要なところを教科書にチェックする。
②説明に使う言葉を極力削る。
③タイムを測る。
①についてはどの教師もやっていることだと思います。
「この授業ではここだけは説明が必要だな」というところを厳選してチェックしておくのです。
②が一番難しいところです。
例えば,数学の1次関数の授業で変化の割合の授業を行った場合,
先生:「切片から右に1進むと,グラフは上に2進むでしょ」
先生:「ここから,また,右に1進むと,上に2進むでしょ」
先生:「次はどうなっている?右に1進むと?」
生徒:「上に2進む」
先生:「そうだよね。ずっとこうなってるの」
先生:「この2は変化の割合の2だよ」
先生:「なぜ変化の割合かというと,xの増加量が・・・」
と説明を続けていった結果,変化の割合とは何なのか?xの増加量とは何なのか?
分からないまま生徒の心は離れていってしまったのだ。
生徒にしてみれば「何言っているか,全然わからない」という状態だったに違いない。
先生:「切片に赤ペンの先を置きます。隣の人と確認。」
生徒:「できました!」
先生:「その点から右に1進みます。グラフは上と下どちらにありますか?」
生徒:「上にあります。」
先生:「いくつ上にありますか?」
生徒:「2です。」
先生:「では上に2進みます。1,2。ではその点から右に2進みます。今度は上にいくつ進めばよいですか?」
生徒:「4です。」
先生:「そうです。正解。では進んでみます。1,2,3,4。」
先生:「では切片に戻ります。隣と確認。」
生徒:「戻りました。」
先生:「その点から右に3進みます。今度は上に?」
生徒:「6つ進みます!」
先生:「正解。優秀です。」
このように,短い説明でテンポよく進めることで,苦手な生徒も安心してついてくることができます。
ところどころに「確認」が入っているのもポイントです。
そして,最後の③時間を測る。
これはそのままのことを実践すればよいのです。
説明のポイントと厳選した言葉を作ったら,実際にしゃべってみるのです。
ストップウォッチを使ってもいいし,近くの時計の秒針をみて測ってもいいし,
15秒以内でできる説明なのか最終チェックするのです。
【授業研究】教師のプロとして・・・
さあ,もう長々とした説明から卒業しましょう。
15秒以上の説明は生徒の心が離れると自覚しましょう。
授業の準備段階でいかに説明の言葉を削るか,ここに教師としてのプロの意識が凝縮されるのです。
ここまで記事を読んでいただいた方にはもうわかったと思います。
「せっかく説明しているのに,全然聞いてくれないんだよなー」
もし,こんな『愚痴』を職員室でもらしそうになったら思い出してください。
生徒が話を聞かないのは先生の説明が長いからである。
誰も先生の説明を聞きたいのではない。生徒は,自分で納得して理解したいのである。